船のよもやま話

船舶に関わる話題

通信 船の免許2

船舶免許には、小型船舶操縦士海技士があります。

海技士の中でも、航海、機関、通信、電子通信に分かれています。

この内、通信や電子通信の資格は、通信装置を使用する小型船舶を操縦する際に必要になるかもしれません。

通常の船舶には無線装置が付いています。相手の船と交話(こうわ)するとき、無線機を用います。そのために特定の周波数が割り当てられており、その帯域は超短波帯と呼ばれています。

英語では、Very High Frequency  頭文字を取ってVHF(ブイ エッチ エフ)と呼んでいます。このVHFは、船の世界では本当によく使用しています。一般には船で使用する無線を海上無線と呼んでいます。空は、空中無線とは呼ばずに航空無線と呼んでいます。

船の世界以外でもこのVHF帯は、航空無線、アマチュア無線、FM放送に使用されています。ひと昔前のテレビは、このVHF帯とUHF(Ultra High Frequency)帯を使用していました。テレビのアナログ放送がそれになります。

このVHFはチャンネルで分けられていて、そのうちの幾つかのチャンネルを国際VHFとして海上無線に使用しています。

最もよく使うチャンネルは、ch16(chチャンネルの意味)です。このチャンネルは必ず聴守しなければいけないチャンネルです。電波法第65条にて聴守義務が定められています。

ch16の周波数は、156.8MHzとなっています。

このch16は、遭難信号・安全信号に使用されています。昔ならば、SOS信号と同じ用い方をする周波数です。

 

誰もが勝手な周波数・chを傍受(ぼうじゅ)していると、遭難信号を聞く事が出来ず役に立ちません。皆が聞いていてこそ、遭難信号の役目が果たせるのです。

また、相手を呼び出すとき、違うchに設定しているといくら呼び出しても、全く答えてくれない状況になります。

これでは困ります。そのため、電波法と言う法律でch16を傍受する事を義務付けているのです。

SOSを例に出しましたが、国際VHFは、電信(トンツー)ではないので、・・・ーーー・・・と打つ事出来ません。・・・(S)ーーー(O・・・(S)

代わりに「メーデー メーデー メーデー」と呼びかけます。

メーデー以外に「パン パン パン」や「セキュリティ セキュリティ セキュリティ」と呼びかけがあります。

セキュリティは、気象情報を知らせる前に使用します。前線や台風情報を海上保安庁が流す際、「セキュリティ・・・南太平洋の海上では今後24時間以内に前線が通過し猛烈な風が吹くでしょう。同海域を航行中に船舶は気象海象にお気をつけください。」と言った具合に用いられます。パンは、全く使われていません。メーデーより軽い内容で、例えば自船が故障した際に使用されます。ただ聞いたことはありませんちなみにトンツーの時代では、500khzが傍受すべき周波数であり、毎時15分と45分から3分間加えて毎時00分と30分から3分間、遭難信号以外発信してはいけない時間帯で、かつ聴守しなければいけない事になっていました。これも電波法で定められていましたが、現在削除されています。ちなみに第64条です。

この法律の意味するところは、タイタニック号の惨劇繰り返さないの一言に尽きます。

SOSの代わりにGMDSSというシステムが発達し、通信衛星などを利用し、全世界的な遭難救助にシステムに代わりました。これに対応した資格が海上無線通信士の資格となります。

 

船の免許の題名と全く違う話になっていますので、免許の話に変えます。

 

海技士小型船舶操縦士の免許は、どこの省庁が発行しているのでしょうか?

それは国土交通省です。

一方で無線の免許は何処の省庁かと言いますと、総務省の管轄になります。

海技士(通信)や(電子通信)の資格を取る時は、まず総務省の総合無線通信士(この場合「通信」)、海上無線通信士(対象は電子通信・4級は除く)の資格を取得します。総合と海上の大きな違いは、トンツーの傍受が出来るかどうかです。

いずれの通信士資格も1級が最上位です。1級の資格を取る際、総合の方が難易度が高いと言われています。

無線の資格では、陸上無線技術士があり、この資格の難易度が高いとされています。

この免許は、通信士ではなく技術士という言葉が使われています。テレビやラジオなどの電波を送信するための免許です。タクシーの世界で使われている免許は、陸上特殊無線技士となっています。

船の方にも似たような海上特殊無線技士があり、1級から3級それに加えてレーダーに分かれています。そして無線電話とレーダーを扱う免許になっています。この無線電話は、VHFを指していて、総合無線通信士や海上無線通信士の下の資格になります。なお、1級海上特殊無線技士の資格を持ち、国土交通省の定める検査を受けることで、4級海技士(電子通信)の資格を貰えます。2、3級の海上特殊無線技士には、海技士に該当する資格はありません。この2級、3級海特技は、国際航海に従事しない船舶に搭載された無線装置が対象となっています。出力も非常に小さい物となります。ただ使用するチャンネルは、国際VHFと変わりありません。1級海特技との大きな違いは英語です。英語の講習を受ける必要があります。しかし、私が受けた講習会では、"SEA"を読めない人が受講していたので、問題ないのかも知れません。ちなみにその人は、SEAをセアとかサーとか言っていました。「海」という事もきっと・・・。それでも合格です。