船のよもやま話

船舶に関わる話題

国旗と国籍

1月27日は、国旗制定記念日です。日の丸🇯🇵が日本の国に旗に制定された日です。

年代は、1870年、明治3年です。明治に入ってすぐに国旗が定められました。江戸幕府時代からも日章旗を国の旗として船で使用していました。

船と国旗は、実に縁が深い関係です。船は、外国にも行きます。その時、日本の船は、日の丸を船尾に掲げます。日の丸が日本国の旗だからです。法律では、日本国籍でない船舶は、日本国の旗を揚げてはいけないと言った具合で記載されています。

なお、外国の船も船尾に自国の旗を掲揚(けいよう)します。ですから、船尾の国旗を見る事で相手船の国が分かる事になります。

以上は、商船や漁船、海上保安庁の船に適用されます。自衛艦や軍艦には当てはまりません。では、軍艦等ではどの様な事をするかと言いますと、軍艦旗自衛艦旗を掲揚します。軍艦旗=国旗の場合もあります。例えば米国の星条旗🇺🇸は、国旗も軍艦旗も同じです。海上自衛隊の場合、自衛艦旗旭日旗になります。

 

船にも国籍が与えられます。日本の船の場合、日本籍船(にほんせきせん)と呼びます。この場合、日の丸を船尾に掲げます。日の丸を掲揚しても良いとして定めている法律によって、船の国籍を与えても良い船を決めています。この法律は、船舶法と呼ばれる法律です。日本籍船は、日本の国の船(お役所の船)、日本人が所有する船、日本の法律に基づいた企業(全員或いは三分のニ以上が日本人役員)が所有する船となっています。

 

なぜ、国旗を掲げるのか?

 

今でも普通の船舶、特に外国間を行き来する船は、国旗は掲げています。外国の船も自国の旗を掲げています。日本の法律・船舶法では、日本籍では無い船に対し、日の丸を掲揚する事を禁止しているのは何故なのか?

明治時代、日本は、幾つかの紛争や戦争をしています。その時相手国の船舶を攻撃します。軍艦に限らず商船も対象です。その船に軍人、兵隊、鉄砲や大砲を積んでいるかもしれません、兵站を叩くことは、必要な事です。

その時、日本の船なのか、敵国の船なのか、それとも全く関係のない中立国の船なのか明確に示す必要があります。その時、判断する為に国旗を船尾の掲揚します。

敵国であれば、拿捕したり、場合によっては攻撃を加え沈没させます。有無を言わさず、攻撃し沈没させることも第二次世界大戦の時はありました。有名なのは、大西洋のイギリス商船を狙ったUボートによる攻撃です。アメリカによる日本商船隊の攻撃もかなり激しい物でした。日本海軍軍人の死亡率より日本人船員の死亡率、消耗率は高く、陸軍20%、海軍16%に対し船員は43%に至っています。

WW2当時、欧州では、自国ではなく中立国の旗を掲げて攻撃を避ける方法もあり、船舶そのものを中立国の船籍に移し替えて運航は自国で行う方法なども行われました。便宜置籍船です。

今では、敵国からの攻撃ではなく、自国の高い税金を避ける為、船の税金が安い国へ船籍を変えることが普通になっています。税金が安い国として、パナマリベリアなどが有名です。それらの国にペーパーカンパニー・子会社を置き、その会社の船舶にしてしまうのです。そうなるとパナマ船籍の船になるという事です。企業にとって、税金以外のメリットもあります。企業はパナマの法律に従う事になり、日本の法律が適用されなくなります。ただ、国際的なルールは各国でも同じですので、海上衝突予防法など同じ内容です。何が良くなるかというと・・・
日本人船員を乗せなくても良くなるのです。日本人の給与は他国に比べ高い水準にあります。給与が安い国の人を雇えば、その分、船会社は儲かります。そのため外国を行き来する外航船のほとんどは、日本人船員を乗せていません。外国の船も含め外航船のほとんど動かしているのはフィリピン人です。欧州の人もいますが圧倒的にフィリピン人船員が占めています。

また次の機会に記載します。

 

日本の国旗を最初に定めた法律は、商船規則となっています。1870年1月27日に制定されました。大旗、中旗、小旗と寸法が尺、寸で寸法が定められています。さらに左右に関しては中央から横の長さの100分の一、旗竿側に日章が位置していました。

今は国旗国歌法にて、日章旗として決めらており、縦が横の3分の2、日章は縦の五分の3で中心が旗の中心となっています。

この日章旗は、旧帝国海軍が定めた日章旗と同じです。商船規則と旧帝国海軍の日章旗は、実は微妙に異なっていたのです。ただ海軍での日章旗は、船首に掲げる旗、船首旗として定められていました。旧海軍の艦船は、船尾には軍艦旗である旭日旗が掲げられ、船首にはそれより小さい旗となる船首旗を掲揚していたのです。船首旗は、各国とも船尾の旗より小さくなっており、Jack(ジャック)といい、有名なのは英国のユニオン・ジャックです。本当であればユニオン・フラッグと呼ぶところ、船尾と同じ図柄で小さい旗の船首旗ユニオン・ジャックが注目されその様呼ばれる様になったそうです。

商船規則で定められた日章旗は、旗のサイズで規定されており、大旗は、祝日に掲げる事になっており、中旗は平常用、小旗は風雨の時に使用されていました。

あと、今は法律では定められていませんけれど、慣習として残っている事で、船飾や満船飾などがあります。一般公開などする船では、その時満船飾を行います。官公庁の船舶では、祝日に船飾を行います。自衛艦の場合は自衛隊内部の規定で定められており、満艦飾をする日など明確になっています。

船飾は、船首マスト、メインマスト、船尾マストの全てに日の丸を掲げます。満船飾は、国際信号旗を船首からメインマスト、そして船尾まで連ねて船を飾る事を言います。

 

商船では全く行われませんが、軍艦や自衛艦などでは、外国の船に訪問する際には、舷梯を上り切ったところ、船内に入る直前にて、船尾にある国旗に対して礼をしてから船内に入ります。下船する際も舷梯の上のところで改めて国旗に礼をいたします。

あと、船同士の礼としては、まず礼をする側は、船尾の国旗を半分下ろします。相手の船はこれを見た場合には、同じ様に国旗を半分下ろし、直ぐに上まで戻します。これを答礼と言います。礼をする側は、答礼を見てから、旗を上まで戻します。この一連の作業が船の礼となります。自衛艦以外の官公庁船や商船では全く見ません。無線で、サンキューでおしまいの様です。

なお、国旗を半分まで下ろしている状態をこれを半旗と呼びます。さらに半旗の状態で黒い布をたらすと弔旗になります。半旗のままでも弔旗の意味をなします。大災害や国主が死亡したときなど、弔旗にします。東日本大震災の3月11日は、弔旗にします。官公庁の船では毎年3月11日に半旗とし追悼が行われています。

 

自衛艦練習船などでは、国旗掲揚や降下の時作業を中断して船尾に向かい敬礼します。付近の岸壁を歩いていても立ち止まるなど対応します。その掲揚降下の時、国旗を地面に触れさせてはいけない事になっています。慎重に作業を実施します。

 

外航にて相手国に入った時にはその国(海軍や港湾施設)から、その相手国を敬する意味で一番高いマストにその相手国の国旗を掲揚する様指示が来ます。来なくても、まぁ、普通はマストの高いところに相手国の国旗を掲揚します。これが船での相手国を敬う表れなのです。

 

船の世界では、国旗は、礼をしたり、礼を行う際に使用したり、船を飾る物であったりと、非常に重要な物なのです。